就職希望の理系の大学生の方から
「企業ではどのような研究のやり方をするのですか?」
「大学と企業の研究の違いは何ですか?」
という質問をよく受けます。
学生さんにとって、就職して知らない世界に飛び込むのは、
かなり不安なことと思います。
昔の私もそうでした。
大学の研究の目的は、「新しい発見をして論文や学会で発表すること」
企業の研究の目的は、「利益を得る製品を開発すること」
ですので、仕事内容が違うのは当然ですが、
学生さんが、企業内の日々の仕事を、具体的にイメージするのは難しいと思います。
最近は、インターンシップや、大学と企業の共同研究など、
学生さんが企業と接する機会が増えてきましたが、
それでも、入社して実際に企業で研究の仕事を始めると、
大学の研究室との違いに、戸惑ったり、ギャップを感じることは多いと思います。
そこで、主に学生の方の向けに、
化学系企業の研究の仕事について(大学での研究の違いを中心に)、
ご紹介したいと思います。
今回のテーマは「常に同じものを製造する」です。
長年の研究開発の試行錯誤の結果、
めでたく新製品が出来上がり、
お客様(企業)が買っていただけることになりました。
化学系の話ですので、例えば、「自分が特殊な樹脂を開発した」としましょう。
大学の研究では、一つ開発できれば論文が書けて仕事が終わりますが、
企業では、ここで一安心、、、ではありません。
これから製造する全製品が、お客様の要求性能を満たさなければいけません。
製品ごとに、性能評価のための製品検査と、その合格範囲を設定します。
全製品がその合格範囲に入るようにします。
例えば、樹脂の強度、色、などを検査し、その検査値が一定の幅に入るようにする。
つまり常に同じものを製造するということです。
これがなかなか難しい。
しかも、世の中の科学技術が進んできて、
合格範囲がどんどん狭く厳しくなっています。
料理に例えれば、常に同じ味にするということです。
このためには、「食材の管理」と「調理の管理」、が必要です。
一定の品質の食材を確保し、しっかりした調理のレシピをつくるわけです。
プロの料理人は、食材にこだわり、調理方法にこだわりますよね。
化学製品でも、「原料の管理」と「製造工程の管理」が必要で、
一定の品質の原料を確保し、しっかりした製造工程のレシピをつくります。
研究者は、製品性能と、原料・製造工程の関係をとことん追求します。
手間がかかる根気のいる作業です。
さらに、一定の品質の原料確保のためには、原料購入元の企業の協力が必要ですし、
製造工程のレシピづくりには、製造部門など社内の協力が必要です。
多くの方々と協力しながら製品を創り上げていくいくわけです。
繰り返し同じものを創ることの厳しさが研究の面白さに感じられるようになったら
一人前の企業研究者になったといえるかもしれません。
でも本音は、あまり苦労したくないですけどね。。。。。
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